インド人女性の伝統的な装飾品について

きらびやかな衣装と華麗な装飾品に身を包んだ女優たちが踊る、あのカラフルなボリウッド映画のワンシーン。インド映画の魅力の一つは、登場人物たちが身につける伝統的な装飾品の数々です。これらの装飾品は、着用者の社会的地位、結婚の有無、宗教的信念などを表現する重要な役割を果たしています。映画の中で、ヒロインが身につける装飾品の変化は、しばしばストーリーの展開や彼女の人生の転機を象徴的に表現しています。

例えば、『RRR』という映画では、ジュエリーが象徴的な意味を持つシーンがあります。英国人の女性たちが身につけている真珠やダイヤモンドは、インドの富の搾取を象徴しています1。これは、インドが古くから真珠とダイヤモンドの産地であり、特にダイヤモンドはアフリカに鉱山が発見されるまでインドにしか存在しなかったという歴史的背景に基づいています。

本記事では、インド映画でおなじみの、そして実際のインド人女性が身につける代表的な伝統的装飾品をいくつか紹介します。

1. ビンディ

ビンディは、額の中央につける小さな装飾品です。インド映画のヒロインたちが必ずと言っていいほど身につけているこの装飾品は、通常丸い形をしており、赤い色が一般的ですが、様々な色やデザインのものがあります。元々は既婚女性のシンボルでしたが、現在では未婚女性も美的な目的で着用します。映画の中では、ヒロインの感情や状況に合わせてビンディの色やデザインが変化することがあります。

2. ノーズリング(ナス)

鼻につける輪状の装飾品で、インドの多くの地域で人気があります。インド映画の結婚式シーンでは、花嫁が大きく華やかなノーズリングを身につけているのをよく目にします。サイズや素材は様々で、小さな宝石から大きな金の輪まであります。一部の文化では、結婚式の際に花嫁が着用する重要な装飾品とされています。

3. バングル

腕輪は、インド女性にとって最も一般的な装飾品の一つです。インド映画の中で、女性たちが腕いっぱいにカラフルなバングルをつけて踊るシーンは印象的です。ガラス、金、銀、プラスチックなど、様々な素材で作られています。色とりどりのバングルを複数重ねて着用するのが一般的で、その音は幸運を呼ぶと信じられています。映画の中では、バングルの音が物語に重要な役割を果たすこともあります。

『ランガスタラム』には、バングルをめぐる印象的なシーンがあります。主人公チッティ・バーブ(ラーム・チャラン)が、ラーマ・ラクシュミ(サマンタ)にバングルをプレゼントしようとするシーンです。チッティ・バーブが、自分の気持ちを表現するためにバングルを贈ろうとする様子は、1980年代の農村部の恋愛文化を巧みに表現しています。

4. アンクレット(パヤル・グングル)

足首につける装飾品で、銀製が一般的ですが、金やその他の金属で作られたものもあります。インドでは、鈴付きのアンクレットは「グングル」と呼ばれ、伝統的に重要な意味を持っています。鈴の音は女性の存在を知らせる役割があり、結婚式で花嫁が身につけることが多く、新たな人生の始まりを象徴します

映画『ハヌ・マン』(2024年)では、主人公がヒロインのアンクレットの音を聞いて彼女が危機に瀕していることを察知するシーンがありました。このエピソードは、アンクレットが単なる装飾品ではなく、コミュニケーションや危機察知の手段としても機能することを示しています。

5. マング・ティッカ

髪の分け目につける装飾品で、額の中央まで垂れ下がるチェーンとペンダントで構成されています。ボリウッド映画の結婚式シーンや祝祭のシーンでは、ヒロインがこの優雅な装飾品を身につけていることが多いです。主に結婚式や特別な行事の際に着用されます。

映画『PS-1』(2022年)で、ナンディニ(トリシャー・クリシュナン)が身につける豪華な宮廷用ジュエリーセットは、彼女の権力と野心を象徴しています。特に、大きな首飾り、複雑なデザインのマング・ティッカ、そして繊細な細工が施された腕輪のセットが印象的です。これらの装飾品は、古代チョーラ朝の豪華さと芸術性を見事に再現しています。

6. ジュマル

耳を覆うように装着する大きな耳飾りで、特に北インドの伝統的な衣装と一緒に着用されます。歴史劇や王宮を舞台にした映画では、王妃や貴族の女性たちがこの豪華な耳飾りを身につけているのをよく目にします。繊細な細工が施されていることが多く、貴金属や宝石で作られています。

7. ネックレス

インドには様々な種類のネックレスがあります。中でもマンガルスートラは、既婚女性が身につける特別なネックレスで、結婚の象徴とされています。インド映画の結婚式シーンでは、花婿が花嫁にマンガルスートラを贈る儀式がしばしば重要な場面として描かれます。通常、黒いビーズと金のペンダントで構成されています。

映画『永遠の絆』では、結婚の儀式の際に新郎が新婦に「マンガルスートラ」をかけるシーンが印象的でした。タミルではターリあるいはマーンガラヤムとも呼ばれます。

8. トー・リング(ビチヤ)

足の指、特に第二趾につける指輪です。多くの場合、銀製で、既婚女性が着用します。一部の地域では、結婚式の際に花婿が花嫁の足に装着する儀式があります。この儀式は、インド映画の結婚式シーンでしばしば感動的に描かれます。

これらの装飾品は、インドの豊かな文化遺産を体現しています。地域や宗教、社会的背景によって、着用する装飾品の種類や意味が異なることがあります。また、現代では伝統と革新が融合し、これらの装飾品のデザインや使用方法に新しい解釈が加えられています。

インドの女性たちにとって、そしてインド映画の中で、これらの装飾品は単なるファッションアイテムではありません。それぞれが物語を持ち、着用者のアイデンティティや信念を表現する手段となっているのです。

投稿者 biscotte

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